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災害関連死を考える
教訓を今後に生かすために
日本弁護士連合会
 
講演・報告後のシンポジウム  
講演・報告後のシンポジウム  
 「災害関連死を考える」シンポジウムが日本弁護士連合会主催により9月2日(火)弁護士会館で開かれた。

 まず南相馬市長の桜井勝延氏による基調講演「南相馬市の現況と復興について」が行われた。同市は、いわき市と仙台市の中間に位置する浜通りの中核都市。同市の太平洋沿岸地域では津波被害を受けるとともに、原発から20㎞、30㎞、圏外地域もあることから、事故により集団避難を強いられたり、その当時の政府、東電からの情報、対応による問題を詳細にわたって解説。

 発災時の人口7万余人が、現在約5万3千人で、その減少は生産年齢人口によるもので、急速な高齢化が進んでいる。小中学校数も小が61%、中が64%に、病院・診療所数は44%に、とそれぞれ大幅減となっている。 
 現課題は、①商圏の喪失、②労働力確保、住宅の不足、③インフラ整備の遅れで、津波による甚大な被害を受けた沿岸地域の土地利用計画、不通となっている常磐自動車道・JR常磐線の開通計画、工業団地整備計画・工場誘致を進めている。

 次に、元南相馬市立総合病院の医師、原澤慶太郎氏による「南相馬市の仮設住宅における福祉と災害関連死」、NPOさぽーとセンターぴあ代表理事の青田由幸氏による「南相馬市における障がい者支援と災害関連死」の基調報告が行われた。
 
 原澤氏は、2011年11月から2年間勤務する中で、ヘルスケア関連事業を手掛け、復興庁支援事業に認定され、その経験を語った。避難に伴う移動、その距離、回数が多く、平常時に2.7倍の死亡率となった。初回避難時の方が死亡率は高い。その後、寒さ、トイレ問題、飲み込み悪化、体を使わなくなる、心のストレスを伝えられない、といった状況が恒常性となっていた。

 青田氏は、福祉障害サービスとして生活介護・就労支援・活動支援・相談事業などを行っている。当市は、地震・津波・原発事故で警戒区域避難・屋内退避、地域内立ち入り禁止となる一方、検問所が設けられ立入禁止となったことから食料・物資・薬品等枯渇し、病院・施設・商店など全て閉鎖となった。東は海、北は6号線不通、東は原発、西は山越え(60~70km)という状況下、バス、トラック、自家用車等で避難し、残った人は7万人の内、一時1万人に。そのほとんどが要援護者とその家族。
 障がい者の70%は、当初安否確認すらされなかった。現在仮設住宅に30%、みなし仮設住宅に60~70&という状態で、状況確認に困難性、みなし仮設での孤立化、避難生活長期化での精神的ストレス等が問題。

 次に、上記の原澤氏、青田氏に加え、弁護士で前山田町災害弔慰金支給審査委員会副委員長の小口幸人氏をパネリストとし、日弁連災害復興支援委員会幹事の岡本正氏のコーディネートでパネルディスカッションとなった。

 小口氏から災害関連死についての現状報告があった。岩手、宮城、福島の3県で申請、認定に大きな違いが出ている。岩手、宮城は発災から1か月でピークを迎え、半年後には大幅減少している。一方、福島では1年後がピークで、3年たっても少ないながらも続いている。これは原発事故の影響や厚労省の関連死認定基準例(長岡基準)の影響も考えられる。申請者側も申請制度を知らない、知っても「もらおうと思わせるので」「資料づくりで、死者と向き合うので」などで申請を遠慮することが多い。
 審査委員会の決定後、地裁の判決、最後は最高裁となり、審査委員会の判断を裁判所が覆すことがある。審査の頼りは裁判例、すなわち統一的審査基準は判例の蓄積であり、政府(行政)は頼りとなる基準作りはできない。
 災害弔慰金は500万円だが、給与所得103万円以上の人は250万円という行政通知もあり、8割は250万円。 被災地では災害関連死に認定されないことに、被災者の間で不満もくすぶっているだけでなく、明確な審査基準がないこともあり、多くの裁判が起きている。
 全国のケースを集計・分析し、類型化したものを審査に提供したらと思う。また、関連死認定の具体例を示し、申請に当っての制度利用に役立たせたら。さらに関連死に至った事例を、今後の防災対策に生かすべきだと考える。

 その後、シンポジウムで、岡本氏により、それぞれの話題で、パネラーからの意見を求め、話題を深堀していた。