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障がい者自立生活フォーラムin かながわ
大震災…できることは、これから必要なことは
被災地の障がい者支援の体験から

被災地報告する井上朝子さん(中央)  
被災地報告する井上朝子さん(中央)  
 『大震災・いま私たちにできることは、そしてこれから必要ななことは』と題して、第14回障害者自立生活フォーラムin かながわが10月1日(土)神奈川県社会福祉会館ホールで開催された。

 障がい当事者として、また施設運営者として、東北大震災の被災地で実際に自ら体験し、また障がい者支援を行ってきた、また神奈川県から現地に入って支援活動を行ってきた3人の報告では、障がい者が厳しい状況に置けれてきたこと、平常時から障がい者自らが地域社会とのつながりを持つことが必要であると、それぞれ語っていた。そして、最後にフォーラム宣言2011を採択、5つの提言がなされた。

 被災地報告の一つとして、たすけっと事務局長で被災地障害者センターみやぎ CIL(Center for Independent Living)の井上朝子氏が、3.11時の恐怖、車いす生活の自分としてヘルパーも被災者ということから介護に関する不安を感じたこと、避難所も満員で、車いすでは移動も方向転換すらままならないのに加え、車いすでも使えるトイレがないということから、事務所で数日間過ごした。福祉避難所も当事者のみで家族同伴は無理、介助スタッフも人手不足という状態が続いた。3月の終わりに『被災地障がい者センターみやぎ』を立ち上げ、全国からのボランティアの力も借り、県内各被災現場における仮設住宅の実態調査や人的支援を中心に活動を展開。活動を進める中で、障がい者を取り巻く環境に大きな地域格差が見え、まだまだ閉鎖的で「障がい者は家族介護が当たり前、それがだめなら施設へ」というところが多い。そういったことから住んでいるはずの障がい者の現状把握ができない。この悪循環を止めるには、私たち障がい者一人一人がもっと街に出て、地域の一員として地域の人とつながりあうことが最も大切で、それが一番の防災・減災につながると思う。」と語った。
  「備えあれば、憂い少なし」と宇田川則夫氏
  「備えあれば、憂い少なし」と宇田川則夫氏

 被災地報告2として、あいえるの会で被災地障害者支援センターふくしまの宮下三起子氏は、発災当日何とか抱える利用者30名の避難場所は確保したが、介護者確保と移動や医療面の問題、ガソリン不足などに苦労。障がい者には、避難先の選択権は非常に少ない。在宅支援の中で最も大事なヘルパー派遣が危機状態。県内の障害者団体が連携して支援センターを立ち上げたが、サービスを平常時利用していない人がおおく、その把握がしきれない。今回の経験を残し、マニュアル作成と訓練、他県のCILとの連携をしていきたい。当事者にならないとわからないことが多い。当事者が発信していくしかない、と語った。

 被災地報告3として、湘南セシリア施設長の河原雄一氏は、県知的障害者施設団体連合会の緊急現地調査チームの1員として、4月初に宮城県各地の施設の被災状況を視察。そこへ神奈川県の施設から職員を7月初まで支援派遣する。これだけ大規模災害だと、行政機関は、一般市民の対応に追われ、障がい福祉だけの特別対応は困難。現地のコーディネーターが不在のため引継ぎが困難。ニーズは現地に入り発信する必要を感じた。手伝いではなく、現地スタッフのサポート、そして広域のネットワーク、連携、顔の見える関係が大切、と語った。
シンポジウムでの会場  
 シンポジウムでの会場  

 国際救急法研究所理事長の宇田川則夫氏は、『災害に要援護者と支援者が行う災害への備え』というテーマで講演を行った。『災害は必ずやってくる、しかも突然。災害の実態を知り、その後の避難生活を正確に知ることがカギだ』としていた。また家の耐震補強、家具の転倒防止、ガラスの飛散防止の3つが自助で命を救える3要素。発災前の対策はこれ。発災後の対策として、メガネ・入れ歯、常備薬、車いすの故障・道路不通、酸素ボンベ、アレルギー食、トイレなどを挙げていた。さらに、安否確認に来てくれる人がいるか、何人か、と会場に問い、地域とのつながりの大切さを訴えた。最後に、『備えあれば憂いなし、ではなく、憂い少ない」だ、としていた。
 
 休憩を挿んで、産業能率大教授の斉藤進氏のコーディネートで、上記4名でのシンポジウムに入った。参加者からの質問、意見などに対し、それぞれのシンポジストが答え、また意見を発表した。神奈川県においても、県内の各事業所相互及び全国CILのネットワークが必要。避難所の周りは砂利式で、車いすには不適、視・聴覚障がい者に対する配慮がない、といった現状を知った人は、特に当事者は自ら考え、それを伝える責任もある、など厳しい意見も出ていた。
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 フォーラム宣言2011

 3月11日午後2時46分、岩手・宮城・福島は突然の大震災と大津波におそわれました。
 愛する家族・多くの仲間や親しい友人など、大切な人々が犠牲になり、まちの多くがガレキと化しました。
 津波と原発事故の大きな悲しみと計り知れない衝撃を私たちは永遠に決して忘れません。
 津波と放射能は多くの人々の生活と地域を奪い、決して癒されることのない傷痕を残しています。
 震災を通し、東北の人々の同じ地域に暮らす<共生の想い>の大切さに気づきました。
 しかし同時に、東北の人々の我慢強さや粘り強さが、思いや要求を率直に外に出しにくくさせているところがあります。そこを組取って支援していくことが求められます。
 
 自助・共助・公助の連携が進められ、「共生行動」の精神を基礎として活動している市民ボランティアがいます。
 先人から受け継いでいる「愛する街」と「美しい風景」、そして,かけがえのない大切な仲間を、みんなの手で守るために、地域に根差した行動をしていけたら懸命な活動が続いています。
 平穏に見える日々のなかで、人災ともいえる原発事故による放射能汚染がさらに次の大規模災害として、私たちに襲いかかっています。
 
 だからこそ、忘れない! もっと伝えよう! 東日本大震災と福島原発事故の教訓を! つながろう! もっと支えよう! 震災・原発の教訓はすべての災害に通じる智慧なのだから!
 いま私たちは、この教訓を胸に「命にやさしい街」を作るため「地域防災力」の向上を目指して手を取りあい、励まし合いながら共に進んでいくことを、今日このフォーラムを出発点として、以下の提言をいたします。

提言1:  障害者団体は防災訓練を企画し、また障がい者は訓練に積極的に参加し、地域住民との交流を深めます。
提言2:  障がい者は自分の地域の避難所や福祉避難所の現状を知り、避難所・福祉避難所環境の充実を市町村と共に、図ります。
提言3:  災害時に障がい者が的確に情報を入手できるよう、障がい者支援拠点を市民協働で立ち上げます。
提言4:  避難所や仮設住宅のユニバーサルデザインを進め、福祉のまちづくりを実現します。
提言5:  被災地障害者支援のため、地域間のネットワークを築き、相互の連携を強化します。
    2011年10月1日
   第14回障がい者自立生活フォーラムin かながわ 参加者一同